Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"The Human Comedy" William Saroyan

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*本の中の本を読む*

本の中の本とは何か!?

本を読んでると、時に本の名前が出てくる。例えば登場人物が読んでる本とか、登場人物が好きな本とか…。そういう本の一般名称は知らないが、私は「本の中の本」と呼んでいる。

そういう本を読むのは楽しい。自分では選ばないような本の時もあるし、元々読んでいた本の理解が深まるような気もする。読書を通して自分の世界が広がるような感じがするのです。錯覚かもしれないけど。

本の中の本を読んで、その本の中の本を読んで、またその中の本を読んで…と無限のマトリョーシカが出来たらよいなと思うが、なかなかそう上手くはいかない。なぜなら、本の書名が出てくる本は少ないからだ。

この本もそういう「本の中の本」でした。

前々回に紹介した" The Bookish Life of Nina Hill "という本の中で、主人公が働く本屋さんのオーナーが主人公にこの本を薦めてこう言います。" Some People say he's too sentimental, but I think he's one of the few writers brave enough to write about the intense beauty of love and joy and the ugliness and fear they sometimes cause."…読んでみたくなりませんか?それで図書館で借りて来ました。

昔、サローヤンの翻訳が文庫本で何冊か売られていた時期があって「ママ、アイラブユー」とか、読んだ覚えはあるのですが…なんかかっこよさげだからという不純な動機で読んだためか全く覚えていない…。まっさらな状態で読みました。

とても読みやすい。中学生でも読めるようなシンプルな英語で書かれている。1章が短く各章にタイトルがつけられているので、励まされる。それなのに本を閉じる度に言葉を反芻して宙を見つめてぼーっと考えてしまう様な本でした…。

第二次世界大戦中のアメリカで、家族の生活を助けるために電報の配達のアルバイトをする高校生の家族や周りの人々の物語です。人間って可笑しくも悲しい愛おしい存在であるっていう意味なんでしょうか、この素敵なタイトルは。あまりに人々が善良で宗教的でついていけない部分もありますが、読んでよかった。

作者はアメリカ人でアルメニア移民の二世であると知り、アルメニアについても少し調べたりして勉強になりました。世の中は知らないことでいっぱいです。同じ作者の他の本もいつの日か読んでみたいと思います。