Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Tom's Midnight Garden" Philippa Pearce

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*洗い上がりは上々*

日本語のタイトルは「トムは真夜中の庭で」なのですが、このタイトルよく考えるとすごいと思う。直訳すると「トムの真夜中の庭」になるけど「~の」が重複する。途中で終わってる感じだから、真夜中の庭で…何があった!?って思わせる。「真夜中の庭のトム」「トムと真夜中の庭」いろいろ可能性があるな…。日本語の助動詞、奥深いです。

この本をどうしてこれまで読んでなかったのかと言うと、表紙の絵が怖すぎる。英語の本も日本語の本も。「真夜中」の話だから!? でも全然怖い話ではなかった。絵を描く人は勿論本を読んでるんだよね?

夏休みに入った途端弟のピーターが麻疹にかかり、トムは叔母さんのうちに避難させられる。叔母さんの家には子供がいなくて、夏休みにピーターと思いっきり遊ぼうという計画を立てていたトムは不貞腐れている。トムはたぶん12歳くらい?叔母さんの家はフラット(イギリスの集合住宅)で庭もない。なぜだか夜も眠れなくなってしまう。それである真夜中、フラットの入口にあるおんぼろの掛け時計(いつも間違った時間を報せる)が13回鳴った時、ドアを開けると、広い庭が現れたのです!花が咲き、木の枝では小鳥が歌っています。(庭、すきだよね。イギリス人。)

時計が13回鳴る!思いつきそうで思いつかないナイスアイデア。まさに日常の中に非日常が現れるイギリス児童文学的展開です。ロマンだよー。

子供の頃うちの時計も鳴ってた。時間の数だけ。12まで鳴ったらまた1から。12時半とか「半」の時には1回鳴る。いつも時計と一緒に数えてたっけ…。最近の時計は鳴らない。鳴ったとしたら、今の子供達は数えるのでしょうか。そんな無為な時間って貴重です。

あっちの世界で女の子と友達になって毎日遊ぶんだけど、恋が芽生える?と思ったらそういう訳でもない。ロマンス小説読みすぎて脳がやられてる。やばい。

前半は淡々と進む。でも、後半物語はミステリーっぽくなってきて、どんどん読めます。

そして、このお話の何がいいかと言うと、終わり方です。なんだかすっきり。満足。読後感が素晴らしいのです。子供の読む本だからかな。

ドロドロした話にうんざりしたら読んでみてください。心の洗濯できますよ。