
*犬は勘定に入れません(注)*
この本のタイトルを見て、「あ、犬のお話なんだ…読んでみたいな。」と思った犬好きの方々へ、注意。これは犬と飼い主の触れ合いに関する楽しうれしい話ではない。それどころか、初っ端から犬の死体!!!
期待を裏切って、す、すみません。
ヤングアダルト小説なのに、であ〜る。
その死体を発見したのが、この物語の主人公イギリスに住む16才の自閉スペクトラム症の少年。飼い主から犯人と疑われて警察に連行され、それがきっかけで犯人を探す探偵になることを決意する。
この本は、なんで買ったのか覚えていないけど、たぶんAmazonのおすすめだった。
私の読書傾向にはアルゴリズムも困惑気味なのでは?と思うが、色々な本を薦めてはくれる。ナイストライ!
2003年出版。日本語版のタイトルは
『夜中に犬に起こった奇妙な事件』。

最近こういう若者が主人公の小説多いな。それとも私が好んで読んでるのか…。神経多様性という言葉を近頃学んだが、"The Maid"も"Almond"もそうだった。
当事者の中には「安易にキャラとして小説で扱って欲しくない」とか「そんな簡単な話ではない」とか感じる人もいるだろう。だから、こういう主人公を描くのは難しいとは思うんだけど、私個人としては、こういう本を読んだ人が多様な神経の状態に苦しむ人のことに興味を持ったり少しでも学んだりできるのはよいことなのではと思う。
この作家は自閉症の人達と接する仕事をしていた経験があるという。主人公の気持ちとか感じ方が細かく書かれていて、「こりゃ大変だろうな…」と本人の気持ちになったり親の立場になったりした。
主人公のクリストファーは記憶力がバツグンすぎて、情景を写真のように記録する。
だから、例えば地下鉄の駅へ行った場面では、そこらじゅうの看板やら広告やら人々の服装やらの情報の洪水に囲まれて苦しくなったりする。
黄色が嫌いで赤が好きだから、黄色い食べ物は食べられない。黄色い食べ物に赤い着色をすればOKだけど、食べ物同士が接触していたら食べられない。だから皿の上に離して置く必要がある。
一日の予定が決まっていると安心する。逸脱するとパニックになる。数学が得意で大好きなのは答えが決まっているから。大学に行って数学を勉強したいという夢がある。
そんなクリストファーの思考が、コンマもピリオドも少ない、詳細な情報てんこ盛りの文章となっていて、彼の目線で世の中を見ることができた気がした。
I said that I wasn't clever. I was just noticing how things were, and that wasn't clever. That was just being observant. Being clever was when you looked at how things were and used the evidence to work out something new. Like the universe expanding, or who committed a murder. Or if you see someone's name and you give each letter a value from 1 to 26(a=1, b=2, etc.) and you add the numbers up in your head and you find that it makes a prime number, like Jesus Christ(151), or Scooby- Doo(133), or Sherlock Holmes(163), or Doctor Watson(167).
僕は自分が賢いわけではないと言った。ただ物事のありのままの姿に気づいていたというだけで、それは賢さとは違う。単に観察力があったというだけのことだ。賢いというのは、物事の現状をよく見て、そこから得た証拠をもとに何か新しいことを導き出すようなことだ。例えば、宇宙が膨張していることを見つけたり、殺人犯を突き止めたりすること。あるいは、誰かの名前を見て、それぞれの文字に1から26までの数値を割り当て(a=1、b=2など)、頭の中でそれらを足し合わせて素数になることを見つけるようなことだ―「Jesus Christ(イエス・キリスト)」(151)や「Scooby-Doo(スクービー・ドゥー)」(133)、「Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズ)」(163)、「Doctor Watson(ワトソン博士)」(167)のように。
クリストファーは素数が大好きだから、この本の章は1、2、3…という順番ではなく、素数である。1、3、5、7…。
だから、途中で自分が何章読んだのだかよくわからない。はは。素敵だ。
クリストファーはシャーロック・ホームズも大好きなので、この本のタイトルはシャーロック・ホームズの短編「白銀号事件」の中の言葉から引用された。
イラストや図形や数式も多く、読者を退屈させない遊ひ心に溢れていて、楽しく読めた。
ただ、この殺犬事件の犯人とその動機に関しては、私としてはあまり納得できていないんだけど。
未だに「ぇぇ〜!?」という感じだ。
読んだことある人がいたら、ぜひ感想をお寄せください。
犬を殺すなんて、許せん……。アニマルポリスはどこ行った?
イギリスに住んでた頃、「アニマルポリス」というテレビ番組をよく見ていた。イギリスでは、RSPCA(英国立動物虐待防止協会)という団体が動物を虐待した人を告訴したりできるのだ。その歴史は古く、幼児虐待が問題視されてなかった頃から存在していたらしい。「子供より動物だったんだぜぃ。」とジョークのネタにする人がいるほど。
という訳で、犬が好きな人にはあまりおすすめしないけど、数学が好きな人は楽しめそうな本です。
巻末にはなんと数学問題のおまけ付き。
(ちなみに、私は「うぎゃっ!」と本を閉じた…。)
(注)今回のブログのタイトルは「ボートの三人男」という小説のサブタイトルから拝借しました。
ニューロダイバージェントな主人公の話といえば(時系列)








