Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"The Penguin Book of Scottish Folktales" edited by Neil Philip

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*金の斧と銀の斧または過去からの宿題③*

どんだけ読みかけの本があるんだ?って感じですけど、これは読みかけではなくて長い間手付かずのまま本棚に置かれていた本です。

子供の頃から昔話やおとぎ話が好きで沢山読みました。そういう話題になると、スイッチが入り詳細に話しすぎて相手と心の距離が開いていくのを感じます…。でも、ここはほぼ一方通行コミュニケーションの場。思い切り語るので、おなかいっぱいになった方はそーっとフェードアウトしてください。

それで、たくさん読んだ中で最もお気に入りだったのは父親の本棚から拝借したイギリスとスコットランドアイルランドの昔話の文庫本。何度も読んでぼろぼろになって手放してしまったのを今でも後悔している。ネットで探してはみるけど、出版社さえわからない。特に何度も呼んだのは「ウィッティントンと猫」「ねこっ皮」「せかいのはての井戸」などのお話。おお、タイトルだけでもテンション上がる!(のは私だけ?)らりらりほー。

その喪失感を埋めようとしているのか、こういう本見ると買っちゃいます。この本も見た瞬間に鷲掴みレジへ直行した記憶がある。

そんなこんなで時折訪れる昔話熱。

今回は町田康訳の「宇治拾遺物語」(河出文庫)を読んだのが引き金だった。めちゃめちゃおもしろかったです。訳がすごいせいもあるかもしれないけど、日本人ってお笑い好きなんですね、昔から。

それと並行して「イギリスとアイルランドの昔話」(石井桃子編・訳、福音館文庫)を手に取り、その後この本をパラパラパラパラ…。そしてわかった。なぜ買ったのに読まなかったのか。全てではないが、多くの話がスコティッシュ・イングリッシュで書かれている。買った当時はなんのこっちゃぎゃふん!となったに違いない。

ところがどっこい。おっほん。今なら大丈夫なのです。映画「トレインスポッティング」を見て以来、スコットランド訛りに憧れて数々のスコットランド訛りのYouTubeを見た今なら読める、のではないか、と思い読み始めたら楽しかった。

訛りのことを英語でaccentと言うのですが、それに加えてその地方独特の言葉、方言(dialect)というのもあるのです。日本語もそうですよね。

スコットランドの方言はゲール語から来ているそうで、英語とは全然違うので全く意味がわかりません。

例えば、

bairnie…little child

lassie…girl

och…oh

een…eyes          などなど

所々に現れる方言を辞書を引かずにわからないまま読んでいると、そのうち「あ!」とその単語の意味が推測できる瞬間がやって来る…それが推理小説を読んでいるようで楽しかった。

こういう感じです。

THE WAL AT THE WOULD END

There was a king and a queen, and the king had a docher, and the queen had a docher. And the king's docher was bonnie and guid-natured, and a'body liket her; and the queen's docher was ugly and ill-natured, and naebody liket her. And the queen didna like the king's docher, and she wanted her awa.

 

 

これを普通の英語にすると、

 

THE WELL AT THE WORLD END

There was a king and a queen, and the king had a daughter, and the queen had a daughter. And the king's daughter was beautiful and good-natured, and anybody liked her; and the queen's daughter was ugly and ill-natured, and nobody liked her. And the queen didn't like the king's daughter, and she wanted her away.

 

となります。

スコットランド訛りがどんな感じか興味がある方はこの動画がわかりやすいので見てみてください。

youtu.be

素敵なお兄さんがそう見栄えも良くないスコットランドのお菓子を「うまい!ほぼ砂糖の味!」とか言いながら頬張るのが微笑ましくていいです。

そういう訳でスコットランドに浸っていたが、この本は470ページくらいあり、4つのパートに分かれている。おとぎ話や怪談は読みやすくてよかった。でも、歴史の話が結構難関だった。名前や地名が難しい。MackenzieにMacDonald、MacInne…誰が誰だかわからなくなる。

そんな時は地名をGoogleで検索し風景を見ると癒される。中でもユー島という島に行ってみたい。eweと書いてユーと読む。雌羊という島の名前だけに羊がたくさん。ストーンヘンジみたいな巨石群もあったり。冬に行ったら辛そうだけど。

オンライン英会話でスコットランドの人と話す。「僕の英語はアクセントがあるから。」と言われ、「素晴らしいです!」と答える。そこに需要と供給のグッドバランスを見たのだった。

昔話の魅力は奇想天外、ナンセンス、読者におもねらず語られるところにある。何の説明もなくただ始まり終わる。時には教訓を学べるけど全く何も学べない時もある。物語の後ろに土着的文化とか習慣とかシンボリズムとかが豊かに息づいている。読みながら心に浮かぶいろんなどうでもいいことについて考えるのが好きだ。「どうしていつも3人の息子が旅に出て1番最後の一人が成功するのかな。」とか。

子供の頃は「せかいのはてってどこにあるんだろう」と思ってた。「せかいのはてのいど」で水を汲んで来なさいって継母からざるを渡されても、水が漏れない ように粘土を詰めればいいんだということをいざと言う時のために覚えていようと思った。意地悪な継母も、世界の果ての井戸も、ざるで水を汲む機会も私には与えられず、その知識は無駄になった訳で、多分それは幸せなことなんだろう。 

今もし夫が泉に落ち、泉から神様が出てきて「お前が落としたのはイーロン・マスクか?それともジェフ・べドスか?」って聞いてきても、私には「いえ、どちらでもありません」とちゃんと答えることが出来る。すると、理論的には夫とイーロン・マスクとジェフ・べドスを正直な私は与えられる訳だが…神様、それはちょっと困ります。Thank you, but no thank you.

木こりも困ったと思う。金の斧じゃ木は切れない。

ここまで書いてきてふと思う。最後まで読んでくれた人はいるのだろうか。もしいたら、ほんと、ありがとうございます。

昔話のいい所はひとつの話が短いところ。全部読まなくても読みたい所だけ読めばいい。

またいろんな国の昔話が読みたいな。

外はまだ寒く、外に出たくない日もある。

でも、物語の扉を開き、妄想列車に飛び乗れば、いつでもどこでも自由に出かけることができる。それはとても幸せなことだ。

 

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