Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Fer-de-lance" Rex Stout

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*理想の生活?*

安楽椅子探偵」って言うけど、安楽椅子ってどんな椅子だ?=comfort chair、easy chair。armchairのことを指すことが多いそうだ。

この本は1934年に出版された安楽椅子探偵ネロ・ウルフシリーズの1冊目です。

図書館で日本語の本を見つけて読み始めて、近所の図書館にあるネロ・ウルフは全部読んでしまった。紙の翻訳本は結構あるが入手が大変。Kindleでも7冊ほど読める。でも、どうせKindleで読むなら英語で読んでみようと思った。

「名探偵たちの事件簿」というサイトによると、このシリーズは全部で74冊もあるらしい…。ワハハ。(小判の山を前にした悪代官の笑い)

というわけで、シリーズの1冊目から始めてみることにしました。

ゴルフ場で人が死ぬ。心臓発作と思われていたけどそうではなかった。偶然その事件に関わることになったネロ・ウルフは、家から一歩も出ずに事件を解決する。

探偵小説のネタバレは犯罪なので、あとはご自分で読んでください。

本当に家から一歩も出ない。それどころか仕事すらできることならやりたくないのだ、ネロ・ウルフは。

彼の一日のスケジュールは以下の通り。

    朝  8:00頃?     起床  ベッドでパジャマのまま朝食

         9:00~11:00  屋上で蘭の世話

午後   1:30            昼食

          4:00~6:00   屋上で蘭の世話    

          7:15            夕食

彼のこの日課は決して動かすことは出来ない。

従って事件の解決に使えるのは、このスキマ時間!

いつ働くんだ?忙しい主婦みたいだな。

だから助手のアーチーやその他の雇われ探偵達が外へ捜査に出掛けていく。

また、ウルフは大のグルメでもある。お抱えシェフのフリッツが料理を担当している。

それから蘭の世話をするセオドアもいる。

総勢男4人、みんなしてレンガの家に暮らしている。

この生活を維持するため、仕方なく仕事をしているネオ・ウルフなのだった…。

古い小説だから、「それ、違法捜査でしょ。」みたいな突っ込み所満載である。ウルフが「女嫌い」で、肥満なのにビールばかり飲んでいるというのも現代小説の基準からすると結構厳しいかもしれないけど、そんな古き良きおおらかな世の中だったんだね。

「トリックがすごい」「本格推理」「読者への挑戦状」とかそんな感じでもない。とにかく登場人物のキャラが立ってて面白い。

それに、ウルフにはなかなかの名台詞が多くて、思わずメモをとってしまったので、ここでいくつか紹介したい。

「That course is the advantage of being a pessimist; a pessimist gets nothing but pleasant surprise, an optimist nothing but unpleasant.」

「それが悲観主義者であることの利点だ。つまり、悲観的であれば常に嬉しい驚きを得ることができるが、楽観的だと失望することしかない。」

「I understand the technoque of eccentricity; it would be furtile for a man to labor at establishing a reputation for oddity if he were ready at the slightest provocation to revert to normal action.」

「私はエキセントリックであることの技を心得ている。いかなる挑発にも動じぬ準備が出来ていれば、奇人だという評判を確立しようとしている人間としては有望だということだろう。」

自然な訳にしようとすると意訳になってしまって難しい!もっといい訳し方があったらぜひ教えてください。翻訳ではどう訳してあるのかな?

興味ある方は日本語でも読めます。

日本語のタイトルは「毒蛇」です。

女性ならみんなそうかもしれないけど、私はこの物語の語り手、アーチー・グッドウィンというウルフの助手が好きです。オープンカーを乗り回し、牛乳を愛飲する探偵。ちょっとプレイボーイっていうか(もしかして死語?)ほぼ全ての女性に優しく、女性はみんなアーチーには何でも素直に打ち明けてしまう。でも、彼は決して恋に落ちることはなくて、ウルフに忠実な仕事人なのでした。これってハードボイルド?

ポアロの相棒ヘイスティングス大佐とは対照的。

フェミニストで悪い女性にもコロリと騙されちゃうヘイスティングスとクールなアーチー、どちらが好きですか?

うーむ、究極の選択…って選ぶ必要もないんだが、悩む。私はヘイスティングスかな。

アーチーは必要な時にいつでも側にいてくれそうにない。

まったく不必要な情報ですみません。

日本での知名度ポアロにはとても適いませんが、アメリカでは大変人気があり、漫画にもなっているしドラマ化も何度もされているそうです。

機会があればぜひドラマも見てみたいです。

1冊目から順番に読んでいこうかとも思ったのですが、全部読めるかわからないし、きっと74冊の中には駄作もあるに違いないので、名作と言われるものから読んでいこうかと考えています。

ウルフシリーズのことまだ書き足りない気がするけど、続きは次回にとっておこう。

家にずーっといられるなんて羨ましい。

たまには家から一歩も出ずに過ごしてみたいです。