*気持ちと味*
また天才に出会ってしまった…。
ドリス・レッシングはイランで生まれ南ローデシア(現ジンバブエ)で育ったイギリス人作家です。
2007年にノーベル文学賞を受賞しています。
ウィキペディアさんによると、共産主義者で様々な差別や社会問題をテーマにした小説を書いたとのこと。
私はまだこの人の短編を4つ読んだだけだけど、特に語り手が女性の小説は、かなり共感できる部分があった。
ノーベル賞ってやっぱりすごい?もしかしてノーベル賞作家の小説読みまくった方がいいのかって思わなくもない。
この本は読書会で読む本を探してインターネット検索をしていた時に見つけた。
面白そう。読んでみたい。
ドリス・レッシングの本は読んだことがなかった。
たまたま家にあった「THE PENGUIN BOOK OF MODERN BRITISH SHORT STORIES」という本の中にレッシングの「to Room Nineteen」という短編を見つけて読んだところ、「こ、この子天才だわ…。」とマンガ「ガラスの仮面」で北島マヤが泥まんじゅうを食べるところを目撃した人みたいになる…わかるかな?
その短編は、出産を機に仕事を辞めて家族のために暮らしてきたある「知的な」女性が夫の不倫をきっかけに少しずつ壊れていくという話。
そこには多くの女性が感じる「ん?」っていう気持ち、日常的にそこにあるんだけど、これまで誰も文字に変換することすら考えなかったような気持ち、が的確な言葉で表現されてる!って思う。
あまり人に本を薦めないようにしてるけど…女性は読んだ方がいいよ!この小説。
女性に限らず女性の心理に興味がある人におすすめしたい。
ネットで探すと、無料のpdf が見つかるし、日本語でも読めます。
「ドリス·レッシングの宝珠短編種~男と女の世界 英宝社」に収録されている模様です。
結果として、残念ながらこの本は読書会では読めなかったので、個人的に購入し読むことにした。
3つの短編が収録されている。
特に表題作「the Ground Mothers」は複雑な人間関係、何となくわかるようなわからんようなモヤモヤした感じが後を引く物語だった。
子供の頃から一卵性姉妹みたいな切っても切り離せない親しい友人同士の女性二人がお互いの一人息子に恋愛感情を持つ話。
正しいとか間違ってるとかいいとか悪いとか有り得るとかありえないとかわかるとかわからんとか、判断できず、この小説を通して作者が伝えたいことが何なのか、そもそも伝えたいことがあるのかさえもわからない。
「なんだろな〜」と考え込みつつ夕食のハンバーグのひき肉をこねこねする。しかしながら、ハンバーグは普通に美味しかった。「?」の味なんてしなかった。誰も私のもやもやした気持ちを知らない。食卓でもやもやしながらハンバーグを食べたのだった。
かみかみしながらもやもやと考えた。
料理の話をする時「愛情を込めて作るから美味しい」とか軽々しく口にする人がいる。その人は悪気なんてなく言っていることは重々承知しているが、それはそう真実でもなく、作る時の気持ちと味に相互関係はない。
どんなに料理が好きな人であっても、毎日の食事作りは義務化し苦行となる時もある。「愛情」とか言われると、「まじ面倒くさ」とか言いづらくなる。夕食作りが面倒=愛情の欠如みたいなプレッシャーかけるのほんとやめてくれません?(誰に対して言ってるのかわからんが世の中に対してぼんやりと物申しております…)
こんな気持ち、ドリスなら的確にびしっと書いてくれるんだろうなぁ。友達でもないのに呼び捨てしてしまった。はは。
夕食作成時に他のことに気をとられると、うっかりして豚汁に豚肉を入れ忘れ、「汁」になってしまうという事件も起こりうる。この場合は味に大きな影響をもたらす。これは経験に基づく事実である。
それとも「愛情」というのは「丁寧さ」や「注意力」と同義語なのであろうか…。
この本も日本語で読めます。邦題は「グランドマザーズ」です。
ドリス・レッシングの本、また読みたいです。