Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Paddy Clarke Ha Ha Ha" Roddy Doyle

f:id:Bookeater:20230219131055j:image

*悲しみに殺られる*

ズーンときた、もう。

この本はずっと本棚にあった。いつ買ったか覚えていない。1993年にブッカー賞を受賞して1994年に日本語で出版されているから、たぶん日本語で読んだか本屋で見かけてタイトルを知っていてロンドンの本屋で買ったのかと思われる。

アイルランドの労働者階級の10歳の男の子のお話です。彼と同じパトリックという名前の子はクラスに5人いて、そのうち2人がパディと呼ばれているらしい。なんたる紛らわしさ!?今はどうか分からないけど、やっぱりオーソドックスな聖人の名前とかが好まれるんでしょうね…。時代は、テレビでベトナム戦争のニュースを見ているから、1960年代か1970年代くらいかな?日本だって昔は子供の名前もっとテキトーだった気がする。

とにかく自由っていうか子供達だけで遊び回る。工事現場で乾いてないセメントに字を書いたり、秘密基地を作ったり、火遊びしたり、万引きしたり、喧嘩したり。ちびっ子ギャング達が悪いことや危ないことをたくさんするので、はらはらして読んだ。時々怪我もして、ぎゃーと思いながら読んだ。

章がない。日々の出来事やパトリックの学んだ知識(すごい物知り)や考えてる事がただただ次々に描かれる。

個人的には細かく章に別れている方が読みやすい。「今日はここまで読んだらやめよう」とかすっきり決めれるから。でも、きっと子供の時間の感覚ってこんな感じなんだろうなと思います。

だからこのままなんとなく終わるのかな〜と思っていた。だらだらと読んでいた。でも、ブックレビューには悲しみについて書かれていたので少し恐れながら読んでいた。

悲しみにも色々あることに気づく。涙をダラダラ流しティッシュの山を作るような悲しみはある意味涙を流すことで解消される。でもこの物語の悲しさは、涙は出ない。ただじんわりと胸の中に染み渡り居座ってため息をつかせるような、そんな静かなものだった。物悲しいっていうのかな…。

両親の不仲がそんなにも子供の心を痛めるとは、大人は気づかない。みんな、仲良くしよう!(そんなに単純な世の中だといいけど)

読み終わり胸の上に本を置き床の上に寝転んだ。あまりの悲しみに、よくドラマで見る「震える手で薬を取り出す心臓発作を起こした人」みたいな感じでKindleを掴み、本を購入。こんな時は馬鹿みたいなラブコメを読むしかない!

ほんとに中毒者みたいでヤバい感じだけど、合法でよかった。