Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"The London Eye Mystery" SiobhanDowd

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*台風と観覧車と回転*

今現在台風6号の嵐の中でこれを書いている。と言うとなんかちょっとかっこいい。不謹慎だから大きな声では言えないけど、台風には人の心を浮き立たせるものがある。

非日常?

学校が休みになったり、電車が止まったり。人々はテレビの中で一日中大騒ぎしている。台風の進路をひたすら確認する。ヘクトパスカルとか瞬間最大風速とか普段使い慣れない難し言葉を使ってみんなが専門家のように語り始める。

誰かに会えば台風の話をすればいい。共通の敵を手に入れて、会話は弾む弾む。

イギリス人程じゃないにしても日本人も天気の話好きだよね。それは、私達が変化に富む天候と季節を持つ幸せな島に住んでるからかもしれません…。

あまり親しくない人と話す時、天気の話は無難で最高だ。

誰も傷つけない。プライバシーに踏み込まない。

何なら私は1時間くらいは楽しく天気の話をしていられるんだけど、だんだん気まずい感じになってくるので、あまり積極的にはお勧めしません。

この本はまたまた図書館の新着本コーナーで発見して借りてきました。子供向けの推理小説です。

翻訳もあった!邦題は「ロンドンアイの謎」だって。

「London Eye」ってご存知ですか?

1999年、ミレニアムを記念してロンドンに建てられたでっかい観覧車です。1周するのに30分かかるそうです。乗ってみたいなー。

ちなみに観覧車は英語でFerris wheel。Ferrisさんっていうアメリカ人が発明したらしい。

主人公は12歳の男の子で、ある日お姉ちゃんと従兄弟とロンドンアイに乗りに行くのですが、チケット売り場は長蛇の列。

そこへ見知らぬ人がやってきて、チケットが要らなくなったからと1枚だけチケットをくれる。それで、ロンドンアイに乗ったことのない従兄弟が1人で乗ることに…。

2人は従兄弟が降りてくるのを待っていたけど、乗っているはずのケーブルが降りてきても、彼の姿はなかった…。

どこに消えたのか…!?

子供たちがその謎に挑む。

子供であるということは探偵業にとって大きな障害だ。エルキュール・ポアロほど行動の自由がない。何処へ行くにも親の許可が必要だし、捜査していること自体「遊びじゃない。不謹慎だ。」と怒られるから内緒にしないといけないし。ご飯もあれば宿題もある。

主人公の少年がとても個性的です。特定されてはいないけど、多分アスペルガー症候群なのだろう。知識が豊富で、将来は気象予報士になりたいと思っている。お姉さんは生意気なティーンエイジャーで、弟を時には邪魔にしながらも助け合っていくところがよかった。

そういう訳で、主人公があらゆる俗世間の事象を気象状況に例えるため、この本には様々な難しい気象用語が続出しておもしろい。

例えば

meteorologist…気象学者

anticyclone,cyclone…高気圧、低気圧

cumulonimbus cloud…積乱雲

thunder clap…雷鳴

Coriolis effect…コリオリ効果

など。

勉強になる。

皆さん、コリオリ効果って知ってますか?

私はこの本のおかげで初めて知ったのですが、南半球と北半球では逆なんです。シンクの水が排水口に流れて行く時の回転の向きが…!北半球では時計回り、南半球では反時計回りなんですって!?そして、赤道上ではまっすぐ流れ落ちて行くんです。

すごい。知らなかった。「ほんとか〜?」と思ったら、YouTubeなどで映像を見てみてくださいね。

この言葉を知ってから、2.3日いろんな人にその話をして当惑を誘ってしまいましたが、もしいつか南半球か赤道に行くことがあったら、実験してみたいな~と思います。かなりの確率で忘れちゃいそうだけど。

台風も北半球では時計回り、南半球では反時計回りになるのです。当たり前のことが当たり前でないと知る。

観覧車が何処から見るかによって回る向きが違って見えるように、物事は見方によって全然違う様相をなす。そんな発想の転換がこの事件を解く鍵となっています。

まだまだ世の中には知らないことがたくさんある。それが伸び代ってことなのか!?