Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Hamnet" Maggie O'Farrell

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*今日も蝶は羽ばたく*

Butterfly Effectってご存知ですか?

蝶の羽ばたきのような小さな小さな活動が何かに影響を与え、それがまた何かに影響を与え….それが次々に伝わって大きな結果へとたどり着く、そのような現象のことです。

Snowball Effect とかDomono Effect という言い方もあります。

ウィキペディアによると、「バタフライ効果(英語: butterfly effect)という表現は、気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル Predictability: Does the Flap of a Butterfly's Wings in Brazil Set Off a Tornado in Texas?(予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?) に由来すると考えられている。」そうです。

科学はロマンなのか!?と思う。

この本のタイトルは「Hamnet」です。図書館で借りました。「Hamlet」はなくて「Hamnet」。ちょっと紛らわしい。

でもこのふたつの名前は、全く無関係という訳でもなくて、「Hamnet」というのはシェークスピアの息子の名前なのです。

というわけで、これはシェークスピアの家族の物語です。

Hamnetは大人にならずに死んでしまうのですが(ネタバレ?かもと思うけど表紙にも書いてあるので大丈夫かな)、Hamnetの死後シェークスピアは「ハムレット」を書きました。

これらは歴史上の事実だから、この話は史実に基づくフィクションとういことになる。とにかく今から何百年も昔の話で歴史的資料が少ない。教会に残された結婚証明書とかそのようなものだろうと思う。

シェークスピアの妻は裕福でかなり年上だったそうだ。彼の結婚は経済的理由によるものだったという説もあるが、この物語の中では二人は強い愛情で結ばれている。

史実が少ないというのは、想像の幅が広がるということだったのか…。

物語の冒頭で、Hamnetの双子の妹がある伝染病にかかる。病気は一体どこからやってきたのかを作者は中盤で鮮やかに描いてみせる。

それはエジプトから船で運ばれてきた小さな小さなノミだった。ある運命のいたずらから偶然が重なり、そのノミがどうして船に乗ることになったのか、船で何が起こったのか、そしてどうやってベネチアを経由してストラトフォードへやってきたのか、詳細に書かれている。

驚くのはそれが全て作者の想像の産物だということです。

作家ってマジシャンみたいだ。からっぽの帽子の中からウサギを取りだしてみせる。

それがあまりにも見事で感銘を受けた。

現実世界でも、人間は全体像を見ることは出来ないが、そんな波動のような連鎖が世界中で起こっているのだろうか、起こっているんだろうな。

例えば、今日私がりんごを買ったとして、その行動がどのような連鎖を生み出していくのか。そのようなことをつらつらと考え、買い物に行って醤油を買い忘れる。

これは偶然なのか必然なのか、いやいや単なる失念でしょう。

そしてりんごジャムを作ってトーストに塗って食べた。おいしかった。

これは必然かつ幸福的結果でありました。