Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"A Movable Feast" Ernest Hemingway

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*若いってすばらしい*

この本は読書会で読みました。

私の中ではヘミングウェイは釣りをしている髭のおじいさんだったんだけど、若者だったこともある訳で…当然ですが。若い頃のパリでの修行時代を、晩年のヘミングウェイが当時のメモを見ながら書いた回想録です。

当時(第一次世界大戦前)のパリは世界中からいろんな芸術家達が集まって来ていて、人々はずいぶん自由に世界を行き来していたんだなと思います。

正直言うと、これまではヘミングウェイの小説はちょっと敬遠してました。ハードボイルドに大きな影響を与えたらしいです。私にはちょっとマッチョすぎる。そもそも女性が書いた小説を読むことが多い気もするし。

この本も至る所にマッチョの香りが…。あらゆる比喩に軍隊用語を多用していたり、やたらと「そして僕らはmake love した。」って書いてある。マッチョアピール注意報発令中。時に、「おい、それ必要か?」とつっこみたくなるけど、そういうところが男性に人気がある理由なのかなー。

有名人のゴシップが楽しい。特にフィッツジェラルドに関しては長々と何章にも渡って書いています。どちらかと言うと悪口…。ガートルード·スタインの悪口、フォード·マドックス·フォードの悪口と選り取りみどり。死人に口なしだもんね。いつかフォードの本を読んでみたいと思ってたからちょっとがっかりした。でも、こういう強烈な個性こそが芸術家の証、みたいなところがあると思います。昔は特にSNSで炎上したりしないし。

ヘミングウェイはどちらかと言うと真面目に作家修行している。新聞記者もやめて退路を断ち、「Hunger is good discipline.」空腹の時の方が感覚が研ぎ澄まされると強がりを言いながら、腹ぺこの大きな身体で鉛筆を削っている。お守りのうさぎの足の触感を確かめる。

実際、人は空腹の時の方が頭が冴えるらしいですね…。私は空腹の時があまりないからよくわかりませんが。

西洋ではうさぎの後ろ足は人気のお守りだそうです。どうやって加工するんだろう?

忘れてはならないと思うのは、これはヘミングウェイのノスタルジックな視点から書かれたものだと言うことです。若かった自分を多少美化、正当化している部分もあるかと思われます。

1人目の奥さんと子供と、シンプルに言うならば自分の不倫が原因で離婚する訳ですが、なんだか自分が運悪く2人目の奥さんに引っかかってしまったかのように書いているのはどうかなーと思わないではない。

ただ、若い頃のヘミングウェイってすごくハンサムなの!参考文献として「お洒落名人ヘミングウェイの流儀」(今村盾夫 今村淳 著 )という新潮文庫の本を読んだのですが、その表紙のブルックスブラザーズのスーツを来て、1人目の妻ハドリーにプロポーズをしに行く日に撮った写真がかっこよすぎて何度もガン見してしまった次第です(バカ)。

それでハドリーと息子を駅に迎えに行って、その時はもう他の女の人を好きになってしまっていて、ハドリーがとてもきれいで息子がかわいらしくて、そしてまだ結婚生活が破綻したことに気づいていないハドリーを抱きしめて、これまでの幸せが走馬灯のようにヘミングウェイの頭の中を駆け巡るのです。…かわいそう!!完全に騙されてる?私。でもこのくだりがとてもエモーショナルに書かれていて上手い。流石だな。ヘミングウェイの小説もっと読みたくなりました。

結果的にヘミングウェイは4度も結婚することになるのです。現実はハッピーエバーアフターではないのか!?

なんか悲しくなってきた。秋のせいかな。栗ご飯食べて推理小説でも読もう。

みなさんも読書の秋エンジョイしてください。