Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"The Listerdale Mystery" Agatha Christie

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*ゼロ地点に帰る*

夜な夜なパーティに出かけて(出かけないけど)、飲んだくれて(一滴も飲まないけど)…とにかく毎日のように外出していろんな人に会うような暮らしをする。すると自分を見失ってしまい、「あれ、私って誰だっけ!?」となる。そんな時はひとりになって、自分を見つめ直す時間が必要だ。皆さんもそうですか?それとも私だけ?

この本は東京に行った時新宿のBooks Kinokuniya Tokyoで見つけて買いました。日本語で何度も読んだことあったけど、ペーパーバックが本屋にあったのは初めてだったのでうれしくて…。Amazonで買えばいいじゃんって言われるかもしれないが、それとこれとは違う!そこには本と私の邂逅があるのです。「ねぇ、読んで。」って言われちゃったんだもーん。ほんと頭おかしくてすみません。

12の短編から成る。人が死ぬ話は4つだけです。冒険あり、ロマンスあり、王家の至宝あり…ハラハラドキドキ、時々クスリと笑えます。起承転結、最後はきっちりと終わる。ほんと上手だなー。最初から読んでも、全部読んでも、一つだけ読んでもいい。「この話読んだら掃除しよう。」とか切りよく止めることもできる。掃除するかはまた別の問題ですけど。

アガサ・クリスティの本の中は独特の時間が流れている。まぁ、殺人とか起こるわけですが、おっとりのんびりしていて癒される。人々は手紙を書き電報を打つ。男女は出会ってすぐ恋に落ち、わずか30ページで結婚を申し込む。マッチングアプリもないし、お互いのこともよく知らないのに、昔の人は直感が冴えていたのか!?(フィクションですよね。わかってますよ。)

どうかこのままでいてほしいなと思う。上流志向って批判されもするけど、フィクションに過剰な「正しさ」が求められないことの良さがそこにはあるのです。

いろんな本を読んでいきたいと思う。でも悲しい話とか辛い話を読んだ後は自分の場所に帰りたい。そこは狭くて暗い穴蔵のようなところで、膝を抱えて息をする。すると細胞がもとの形に戻って、また元気に冒険の旅に出かけることができる。

この本はそんな本です。

興味が湧いた人は読んでみてください。邦題は「リスタデール卿の謎」です。