Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Can't Hurt Me: Master Your Mind and Defy the Odds" David Goggins

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*そして試練は続く*

「食べ物の好き嫌いが多い人は人の好き嫌いも激しい。」というのは、友人のお母さんの名言である。なるほどなと思う。

できるだけ公正で誠実な人でありたいと思っているが(本当です!)なかなか実行するのは難しいことだ。

この本はあるオンライン英会話の先生が薦めてくれたのだが、Amazonで調べてみた途端に「いや、これは私向きの本じゃないでしょ?」と思い、「これは…マッチョな人の読む本ではないかと思います…。」って言ったんだけど….。その後すぐ思い直してKindleを掴み読み始めた。Kindleはいつも私の衝動的読書に付き合ってくれるありがたい機器なのです。

「Don't judge a book by it's cover.」ということわざがありますが、この言葉の通りフェアじゃないよね…。夫が「あしながおじさん」を「ロリコン小説」と言うのだが、挑発だとわかっていても憤ってしまう。一度も読んだことがないというのだから尚更だ。本を読まずにそれに関して何か言うのは本にも薦めてくれた人にも失礼な話だ。何か言いたかったら読んでから言うべきなのだ。まぁ、若干批判する気満々で好奇心から読み始めた事は素直に認めたい。

それで、結論から言うと読んでよかったと思う。

この本はアメリカ軍でSEALとか超厳しい訓練を渡り歩き、懸垂のギネス記録を持つ(4000回とか)人の自伝(?)なんだけど、何か言語感覚がすごい。本人もmustle brainとか言ってるから筋肉で考えてるのかなー?

Introductionから「From the time you take your first breath, you become eligible to die.」という奇想天外な一文に出会い心奪われる。次々に繰り出される独自の発想と独特な言語と困難と罵倒語の数々…やっぱり普段読まないような本を読むと刺激を受ける。

とりわけ気に入ったのは「voluntary torture」という言葉で、「いつでも止めれるのになぜこんな苦しいことをしているのか(入隊テストとか)と自分に問いかける、そしてそれが自ら望んで苦しんでいるんだと考えると前向きになれる」という発想です。これは自分を励ましたい時に結構使えるのではと思います。

それから、「cookie jar」という言葉も印象深かった。それは苦しい時、瓶の中からクッキーを取りだして食べるように過去の成果を思い浮かべる。「あれもできたじゃないか」「これもできたじゃないか」と考えることにより自信と元気を取り戻せるというものだ。クッキーっていうところがかわいい。何故か荒川静香イナバウアーの時「one icecream, two icecream」って数えてるって言ってたのを思い出すが全く無関係。でも苦しい時に楽しいことを考えるという点では共通してるのかも。

そういう、現状に満足せず常に「uncommon amongst uncommon」を目指して邁進していくすごいお方なのですが、受け入れ難い部分が一点だけあった。それは女性とのつきあい方です。

元妻となんとなくつきあい続けているうちに妊娠させてしまい「なぜこんなに次々と困難が現れるのか。彼女を愛してもいないのに。」と母親の前で泣き崩れた場面では怒りのあまりKindleのスイッチを切る。いやいやそれは違うくないか?自分にも責任あるでしょ?って思って…。それでしばらくしてまた読み始めたら、次の章ではまた別の人と結婚してた。

男らしく(?)説明は一切なかった。というか、眼中にないのかとも思う。だってこんなことしてたら恋愛とか家族とかに使うエネルギーとか時間とかなくない?なくなくなくなくなくなくない?

そもそもこれはジェンダーギャップと考えるべきなのかもしれない。女性の書いた小説はほぼほぼ恋愛や家族のことについて書かれているが、男性の書いた小説は冒険や栄光の話だもんね。

そういう訳で男心を理解したい女子、もしくは強くなりたい男子におすすめしたい一冊です。私もマッチョへの理解が少し深まったのでは!?と思います。

翻訳はまだされていないようですが、YouTubeで彼のトーク映像をたくさん見ることができます。私もひとつ見てみたところ、心を奪われるのは肌の美しさ!つるつると輝いているではないか。そこのところ詳しく聞きたい。どうしてアスリートの肌はきれいなのか。運動すると汗をかき血行もよくなるのだろう。もっと運動しようと心に誓う。動機は少し違うけど。それからなんか偉いお坊さんのようだった。厳しい修行をすると人はこうなるのかとも思う。

最後まで読んだところで、この本は自分で書いたんじゃないらしいとわかりショックでガーンとなる。ハリー王子の本みたいじゃん!と思い、ふと気づいた事実…ここにも読んでないくせに批判している本があった。これこそ次から次へと私を襲うtortureなのか?読むべきなのか?うーむ。公正な人間への道は果てなく厳しい。