Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Rilla of Ingleside" L.M.Montgomery

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*世界の片隅で戦争を考える*

7冊目です。

赤毛のアン」リーディングマラソンを去年始めたのだが、10月以降足踏みしていた。忘れていた訳ではなく、少し尻込みしていたのだ。だって、この本はすごーく悲しいに違いないと予想していたから。知りたくなくても、このデジタル社会では読みたい本のあらすじを知らずには過ごせない。それはいいことでもあり悪いことでもある。それで、読む気が出てくるまで放置しておいたら、ようやく読んでみるかという気になった。今は5月。亀のように進んで行きたい。亀は長生きだしねー。

この本は赤毛のアンシリーズなんだけど、主人公はアンではない。?と思う方もいらっしゃると思いますが、モンゴメリさんは大人気だからアンの本を書かなきゃならなかったのだが、ちょっぴりアンに飽き気味でおられたではと考えます。結果として、15歳のフレッシュで美しいけれど若干軽薄なアンの娘リラのお話になりました。勿論アンもギルバートも出てくるし、二人が相変わらず仲良しなのは微笑ましい。

しかし、少女の幸福の極みで始まったこの物語ですが、忽ち第1次世界大戦が始まって、戦地から遠く離れたカナダにも戦争の影が忍び寄る。当時カナダは英国領だったんですね…。18歳以上の若者(男性)が次々と戦地へと旅立ってしまう…。戦争だから。それもみんな志願して行っちゃうの。勇敢で愛国心があることを証明するために…。

それでいいのか!?それは美しいのか?!と疑問でいっぱいになる。

戦争でわたしが嫌だなーと思うのはプロパガンダです。戦争を美化する。戦意高揚のためなんだけど。例えどんな理由であっても戦争は殺し合いなわけで、戦争に行くのは勇敢で立派で行かないのは卑怯者と言われるというのはどうなのかと思う。私は息子もいるし最近は女性兵士もいるし、ほんとそんなことのために産んで育てたんじゃないんです!と言いたい。そしてロシアの人もウクライナの人もそうだろうけど、何だか気づいたら取り返しのつかない事になってた…普通の人々にとって戦争ってそんなもんじゃないのだろうか。昔の日本もそうだったし、いつそうなってもおかしくないと考えると怖い。

悲しい本だと思ってティッシュペーパーを用意して挑んだが、不思議と湧いてくるのは激しい怒りと無力感であった…。もちろんモンゴメリの小説だから、リラのラブストーリーでもあるし、戦争中でも滑稽な小さな事件も起こります。

折しも広島でG7が開催されたこともあり、戦争についていろいろ考えました。「ひとはなぜ戦争をするのか」というアインシュタインフロイトの手紙の本も日本語で読んだ。難しくてよくわかんなかったけど、フロイト曰く、「文化が発展すれば戦争は減っていくだろう」との事です。おかしいな~。文化発展してないのかな?と思う。同時に「文化が発展すれば少子化が進む」とも言っていて、こちらはあてはまる国もある。ということから考えると、文化が発展すると人間はもっと考えるようになるはずだったが、テクノロジーの発達で意外と考えなくなっちゃったねということなのかもと思った。

こんな極東でおばさんが一人戦争について思い悩んだところで何も変わる訳ではないとはわかっているが、それでも考えてしまう。この小説を読むと少しだけ自分の家族が戦争に行ってしまった気持ちを体感出来る、そんな力があると申しておきましょう。

読んでくれた方々を憂鬱な気分にさせてしまって非常に申し訳ないと反省しています。次回は楽しい本を読んでもっと楽しいブログを書くことをお約束致します。ピース!