Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"A Sound of Thunder" Ray Bradbury

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冬の花火

今日は趣向を変えてカラーでお送りします。

黒い画用紙にクレヨンで描くのは単純に楽しい。

1ヶ月ほど前、"Hamnet"という小説を読んで、"Butterfly Effect"という言葉に取り憑かれていたのだった。

そういう話を誰彼構わずしていたら(迷惑?)、あるオンライン英会話の先生がこの本を紹介してくれました。

「待てばカイロの日和あり」?ちょっと違う?

「求めよ。さらば与えられん。」

これ、私の好きな言葉です。

この本は短編集なので、正確に言うと、表題作である"A Sound of Thunder"を紹介してくれたということです。文学において"Butterfly Effect"をテーマにしたおそらく最初の作品ではないか、と。

それで、早速Kindleで購入して読み始めた。

なぜなら、Kindleは買った瞬間に読めるから。本当は紙の本がよかったのだが、注文して届くまで待てなかったのだ。

ブラッドベリの本は日本語で何冊か読んだことがある。短編集はいいんだけど、「たんぽぽのお酒」は最初の数ページで挫折した苦い経験がある。

なんかかわいすぎてついていけなかったんだよね…。私はこの小説を読むには年をとりすぎたのだろうかと思った。

しかし、今回34の短編(結構なボリューム)を読んでわかったのはブラッドベリの小説は少年の心でできているということだ。

特徴としては、比喩を多用していること。それから、普通英語の文章では同じ言葉を繰り返し使うことはタブーとされているっていうか、それは知的ではないとされているわけだけど、ブラッドベリはそれを意識的にやっている。結果として、子供のように純真で新鮮な若々しい文章となっている。

これは簡単なようで難しい。他の人には真似できそうにないなと思う。

個人的には、私はこんな風に英語で喋りたいです。

比喩って大好きだなー。

例えば、こんな文がある。

「The camera clicked like an insect. It was blue and metallic, like a great fat beetle held in the man's precious and tenderly exploiting hands. It winked in the flashing sun light.」(「Sun and Shadow」より)

比喩はどんなに言葉を尽くして語るより雄弁に何かを伝えることができる。

like, like,って口癖の人もいてすごく気になるから、加減が難しいとは思います。

読みながらふと思った。「あれ、これって星新一じゃん。」

ネットで調べたところ、星新一レイ・ブラッドベリがかなり好きだったそうです。

子供の頃、読みまくってました…。

星新一も少年の心を持つ素敵なお方です…。

左右の視力が違いすぎて徴兵に落ちたという話を聞いて、私も左右の視力が違うのでちょっとうれしかったりしました。はは。

既にブラッドベリを好きになる下地はできていたということか…。

勢いづいて、「たんぽぽのお酒」もいってみよう!

と思います。

短編をひとつ読むと、本を閉じて目を閉じて、しばらく余韻に浸らないと次の短編には進めない、そんなブラッドベリの短編は花火のようでした。

短いけれど鮮やかな一瞬が心に残るお話たちです。

" the Love Hypothesis" Ali Hazelwood

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*ブックカバー、再び*

イヴリン・ウォーの「ブライズヘッド、再び」という小説が好きで、いつか英語で読みたいなーと思っています。タイトルかっこいいからパクってみました。この本とは全くと言っていいほど無関係なんですけど。はは。

数ヶ月前、「もう、読んでる本をブックカバーで被うのはやめよう。自分の読んでる本を堂々と世間に知らしめるのだ」的なことをこのブログに書いた気がする。いや、そんなに強気な発言ではなかったかもしれんけど。

しかし、その舌の根も乾かぬうちに、すごすごと家にあった包装紙をカッターで切り抜き、ペーパーバックを包み込むという事態に追い込まれる。

だってね、この本の表紙、ちょっと抵抗あったんですよ。電車の中とかで読むには。

そこで、はい、みなさーん、ちょっとググってみてください。

どうでしょうか…。表紙一面にキスする男女のあまりかわいくないイラストが、ある。別にいいんだけど。人の目を気にしすぎでしょうか。

自意識過剰、なんだろうな。電車の中でニーチェとか読みたいな。全然楽しくないけど、かっこいいかもな、とか思ったりする訳です。

誰も見てないんですけどね…。

表紙がどうのこうのといいながらも紀伊国屋書店で購入した本です。

最近こういう理系タイトルの本ばかり読んでる気がする。好きなんでしょうか…。おそらく、自分に欠けてるものに憧れているのでしょう。

主人公は癌の研究をする大学院生で、ある事情からフェイク彼氏が必要となり、その瞬間にやって来た人物に行き当たりばったりでキスする羽目に陥る。そして、その相手がたまたま(!)イケメンの天才科学者で、性格悪いと評判の男だったが実は案外いいやつで、しかも彼女のことがずっと好きだったという、結構なお話でした。

さすがに「それはない」と騙されやすい私でも思ったが、読んでる瞬間は「あらまぁ」とか思ってしまう。

フィクションだからなんでもありです。

ただ、ひとつだけ気になったのは、主人公の自己評価があまりにも低いこと。

地味なヒロインが結構好きな私でも(なんと言っても、ジェーン・オースティンのヒロインの中で一番好きなのは「マンスフィールド・パーク」のファニー・プライスな訳ですから)、さすがにどうかと思う。

謙虚さは美徳だ。

でも、「控えめな女=かわいい」という方程式が常に正解な世の中では、女性の大統領は生まれないのではないか。

ヒロインにも多様性を!

ということで、今度は強い女の人が出てくる小説を読みたいと思います。

そして、本に優劣をつけるのは、書いた人に失礼だし、やっぱり本は覆わない方向でがんばって行きたいと決意を新たにしたのでした。

"Hamnet" Maggie O'Farrell

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*今日も蝶は羽ばたく*

Butterfly Effectってご存知ですか?

蝶の羽ばたきのような小さな小さな活動が何かに影響を与え、それがまた何かに影響を与え….それが次々に伝わって大きな結果へとたどり着く、そのような現象のことです。

Snowball Effect とかDomono Effect という言い方もあります。

ウィキペディアによると、「バタフライ効果(英語: butterfly effect)という表現は、気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル Predictability: Does the Flap of a Butterfly's Wings in Brazil Set Off a Tornado in Texas?(予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?) に由来すると考えられている。」そうです。

科学はロマンなのか!?と思う。

この本のタイトルは「Hamnet」です。図書館で借りました。「Hamlet」はなくて「Hamnet」。ちょっと紛らわしい。

でもこのふたつの名前は、全く無関係という訳でもなくて、「Hamnet」というのはシェークスピアの息子の名前なのです。

というわけで、これはシェークスピアの家族の物語です。

Hamnetは大人にならずに死んでしまうのですが(ネタバレ?かもと思うけど表紙にも書いてあるので大丈夫かな)、Hamnetの死後シェークスピアは「ハムレット」を書きました。

これらは歴史上の事実だから、この話は史実に基づくフィクションとういことになる。とにかく今から何百年も昔の話で歴史的資料が少ない。教会に残された結婚証明書とかそのようなものだろうと思う。

シェークスピアの妻は裕福でかなり年上だったそうだ。彼の結婚は経済的理由によるものだったという説もあるが、この物語の中では二人は強い愛情で結ばれている。

史実が少ないというのは、想像の幅が広がるということだったのか…。

物語の冒頭で、Hamnetの双子の妹がある伝染病にかかる。病気は一体どこからやってきたのかを作者は中盤で鮮やかに描いてみせる。

それはエジプトから船で運ばれてきた小さな小さなノミだった。ある運命のいたずらから偶然が重なり、そのノミがどうして船に乗ることになったのか、船で何が起こったのか、そしてどうやってベネチアを経由してストラトフォードへやってきたのか、詳細に書かれている。

驚くのはそれが全て作者の想像の産物だということです。

作家ってマジシャンみたいだ。からっぽの帽子の中からウサギを取りだしてみせる。

それがあまりにも見事で感銘を受けた。

現実世界でも、人間は全体像を見ることは出来ないが、そんな波動のような連鎖が世界中で起こっているのだろうか、起こっているんだろうな。

例えば、今日私がりんごを買ったとして、その行動がどのような連鎖を生み出していくのか。そのようなことをつらつらと考え、買い物に行って醤油を買い忘れる。

これは偶然なのか必然なのか、いやいや単なる失念でしょう。

そしてりんごジャムを作ってトーストに塗って食べた。おいしかった。

これは必然かつ幸福的結果でありました。

 

 

 

 

"Owl at Home" Arnold Lobel

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*おいしいのかな⁇*

エルビスサンドイッチってご存知ですか?エルビスにとっては「おふくろの味」だったそうですが、パンにピーナッツバター、ジャム、バナナ、カリカリのベーコンを挟んでトーストしたものです。ジャムがストロベリージャムだったという説とブルーベリージャムだったという説があります。どちらにせよ、ジャムとバナナとベーコン!?うぎゃぎゃ…と思ってしまう。ピーナツバターとジャムとバナナはたぶん大好きな組み合わせなんですけど。ベーコン合うのかな…。でも、怖いもの見たさじゃないけど一度は食べてみたいと思っている気になるメニューです。

この本はネイティブにとっては本をを読み始めたくらいの子供が読む60ページくらいの本です。

作家のアーノルド・ローベルの1番有名な本はたぶん「がまくんとかえるくん」じゃないかと思います。日本でも小学校2年生の教科書に載ってて、お手紙をめぐるがまくんとかえるくんの話。読む度に「なんでかたつむりに手紙預けたん?」って笑えるけど、2人の友情にほろりとするめちゃめちゃかわいいお話です。

こちらは息子も大好きなふくろう君のお話。ふくろう君が家の中で繰り広げるドタバタ騒ぎをユーモラスに描いています。

どうしてこの本を読んだかというと、このブログにも書いた「Normal People」という本が原作のドラマを最近見てみようかな〜と考えていて、たぶん泣く。泣くのやだけど、もしふくろう君みたいに、泣いても涙をポットに溜めてお茶を入れようと想像すれば笑えるから悲しくないかなと考え始めたら止まらなくなり、日本語は家にあるのに英語版をAmazonにて購入してみたというこ訳です。

そういうバカみたいなことを頭の中でぐるぐる考えている毎日。ふくろう君の中になんとなく自分を見い出している今日この頃です。

ふくろうくんはある日「今夜は涙のお茶をのもう」と思ってポットを取り出して次々と悲しいことを思い出し涙を溜めていきます。

その「悲しいこと」の数々がほんとくだらなくて笑える。「ちびた鉛筆!」とか、そんなことでおいおいと泣けるものなのか!?しかし、涙は順調にたまっていき、それで涙が十分溜まったら「さてお茶をいれよう」ってスンと泣き止んでお茶を煎れ始めるという、そのビジネスライクな泣きっぷりがかっこいいです。

最後に「涙のお茶はちょっとしょっぱいけどいつもおいしいな。」って言うのですが…涙のお茶、飲んでみたくないですか?まあまあ気持ち悪いけど。昔、一時期、どういう訳か大流行してた「自分の尿を飲む健康法」というのがあったのを思い出し、うぇ〜と思ったり。尿は絶対いやだけど涙は少し試してみたい。なぜならなんだか詩的だから。

というわけで、世の中の一度は味わってみたいものに関するお話でした。

"Emil and Detectives" Erich Kästner

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*一本漬けかピクルスか*

子供の頃からケストナーのファンで何度読んだかわからない。お母さん思いのエーミールにいつ読んでも胸がきゅんとなる。そして山高帽の悪党をとっちめる個性豊かな子供たち。もちろん最後は文句なしのハッピーエンドだ。

図書館に行って他に読む本を借りていたにも関わらず、この本を見つけてむんずと掴んだ。家に帰り早速読み始める。

原作はドイツ語だから、英語で読むと翻訳ということになる。普段は元々英語で書かれたものしか英語で読まない。だって、どうせ翻訳なら日本語で読んでも英語で読んでも一緒じゃない?それなら日本語の方が断然読みやすいかなと思って。

オンライン英会話の先生にそういう話をすると、そんなことはない、英語とドイツ語は非常に近い言語だから親戚みたいなもんで従って英語の訳の方が原書に忠実に訳しやすいのでは云々と言われる。まぁ、一理あるね。

でも、翻訳というのはどの道誰かの脳みそを経由してやってくる文章だ。直行便ではない。原作とは似て非なるものでありうる。

なんだかそれって料理のようなものかなと思った。

きゅうりが食べたい。生で齧ることもできるし、料理人が日本人だときゅうりの一本漬けになるし、アメリカ人だったらピクルスにしてハンバーガーに添える?そういう感じに似ている。

ちなみに、この本は、2019年アメリカ版で、「現代のアメリカの子供達に親しみやすいように現代的アメリカ英語に訳した」と翻訳家も後書きで述べている。

なるほど、不思議にアメリカンなエーミールです。

私が子供の頃から読んでいるのは、小松太郎さん訳の翻訳っぽい美し日本語版。だから、このふたつの翻訳小説はなんか全然雰囲気が違っててそれも興味深かった。「おーい、エーミール君、お母さんにそんな口の利き方していいのかい?」と思ったけど、確かに今どきの子供は親に敬語なんか使わないだろうなとも思う。私は個人的には不自然翻訳日本語がかなり好きなんですけど。村上春樹さんもそうなのではないかと思っています…。

ひとつ残念だったのはこの本では私の大好きな作者のまえがきが完全に削除されていたことです。ケストナーの前書きは確かに少々くどめではあるけど、かわいらしいのに…。その代わりにゼンダックの文章がまえがきとされていました。まぁ、それもよかったです。

味はお好み次第。いろんな味で料理を楽しみたいです。

"The Secret Diary of Adrian Mole, aged 13 3/4" Sue Townsend

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*50回です!!*

いつも読んでくださっている皆さん、そして初めて読んでくださっている方々、今回この読書感想文ブログはめでたく50回目を迎えることが出来ました。

ありがとうございます。

ウキーっということで、これからも地道にがんばります。

現在何か記念になることをしたいと思って考え中なので、気長にお待ちいただければうれしいです。では、いつものように感想文始めます!

 

*歌いつつ読む*

50回と言うことで(くどい?)、自分が最も好きな感じの本が読みたいと思った。

となるとやっぱりイギリスの、笑える本!かな。

どういう訳かそうなる。人間の好みに説明はないのだ。

この本はネット上で読んだ誰かのブログがきっかけでずっと気になっていた。

もう結構長く生きているので、読まなくても自分の好きそうな本はわかるし、着なくても似合いそうな服はわかる。そのような予想が裏切られることも、よくも悪くもままあるので、あまり頼り過ぎない方がいいのかもしれないけど。

それで、Amazonで購入し、台風でなかなか届かなかったりしたので、やっと手にした時はうれしかった。にんまり。

結論から言うと、予想通り、いや、予想以上に面白かったです。

タイトルそのままに、この本は13と3/4才の少年の日記という形で書かれている。

最初のページは1月1日、今年の抱負から始まる。これって…「ブリジット・ジョーンズの日記」と一緒だな。「ブリジット…」の方がずっと後に書かれてるから、影響を受けたのかもと思った。

初日から、エイドリアン(主人公)のお父さんとお母さんは二日酔い。大晦日のパーティで飲みすぎて、酔っ払ったお父さんは犬にお酒をのませて、犬が家の中で大暴れしてしまい、怒ったお父さんは大声で悪態をつきながら犬を庭に放り出す。そして、少年は父親が警察に捕まるのではないかと不安になる….。

こんな感じで、日記を書いている本人は至って真剣に悩み考えて書いてるのだが、それが傍から見るとバカバカしくて滑稽で時に悲しい。それが思春期っぽい。そしてこんな複雑な二重構造のお話を書ける作者の才能というか技術がすごいなと思った。

とにかく大人がみんな無責任で笑える。

学校の遠足で大英博物館に行く場面がある。子供達がバスの中で「Ten Green Bottles Hanging on a Wall」という歌を繰り返し歌う。

どういう歌かYouTubeで聴いてみた。

数がどんどん減っていく数え歌なのだが、このメロディ「Ten Fat Sausages Sizzling in a Pan」という歌詞でも歌われている曲だ。

たぶんアメリカ版がソーセージなんじゃないかと思う。

なぜなら、グリーンボトルの歌は文法的にかなり複雑だからだ。

Ten green bottles hanging on the wall,
Ten green bottles hanging on the wall,
And if one green bottle should accidentally fall,
There'll be nine green bottles hanging on the wall.

if節の中にshould が入っている。これは、「万一~ならば」という意味で、そういうことが起こるか起きないかはわからないが、話し手は可能性が少ないと思っている場合に用いられるそうです(「表現のための実践ロイヤル英文法」より)。

勉強になる。子供の歌ですら回りくどい。ここにイギリス英語の真髄を見た。

などとオンライン英会話でイギリス人の若い先生に話したところ、「ネイティブだからわからない。shouldがあってもなくても全く同じ意味だよ。」と言われる。そうっすね。細かいこと気にすることないっすね。わは。

ネイティブに文法の質問しないって決意してたの忘れてた。

それはともかく、歌うと単純に楽しい。クセになる。特に「accidentally」ってところが、ちょっと難しワードで、よい。

ひとりで繰り返し歌っていると、客観的にはかなりイカれた感じに見えるのではないかと思う。家の外では歌わないように気をつけたい。

数字に弱いので、3くらいまでは「次なんだっけ?」と戸惑う。そういう人には脳トレ効果もあるかもしれない。

本の中では、この歌を繰り返し聞かされたバスの運転手が、ストレスの余りパーキングエリアで飲酒をしてしまい、警察に捕まっていた。

ちょっと古い(1982年初版)けど、イギリスのワーキングクラスの雰囲気がわかる、それに最初から最後の最後まで笑える本でした。

続編もあるので、ぜひ読んでみたいです。

 

"The London Eye Mystery" SiobhanDowd

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*台風と観覧車と回転*

今現在台風6号の嵐の中でこれを書いている。と言うとなんかちょっとかっこいい。不謹慎だから大きな声では言えないけど、台風には人の心を浮き立たせるものがある。

非日常?

学校が休みになったり、電車が止まったり。人々はテレビの中で一日中大騒ぎしている。台風の進路をひたすら確認する。ヘクトパスカルとか瞬間最大風速とか普段使い慣れない難し言葉を使ってみんなが専門家のように語り始める。

誰かに会えば台風の話をすればいい。共通の敵を手に入れて、会話は弾む弾む。

イギリス人程じゃないにしても日本人も天気の話好きだよね。それは、私達が変化に富む天候と季節を持つ幸せな島に住んでるからかもしれません…。

あまり親しくない人と話す時、天気の話は無難で最高だ。

誰も傷つけない。プライバシーに踏み込まない。

何なら私は1時間くらいは楽しく天気の話をしていられるんだけど、だんだん気まずい感じになってくるので、あまり積極的にはお勧めしません。

この本はまたまた図書館の新着本コーナーで発見して借りてきました。子供向けの推理小説です。

翻訳もあった!邦題は「ロンドンアイの謎」だって。

「London Eye」ってご存知ですか?

1999年、ミレニアムを記念してロンドンに建てられたでっかい観覧車です。1周するのに30分かかるそうです。乗ってみたいなー。

ちなみに観覧車は英語でFerris wheel。Ferrisさんっていうアメリカ人が発明したらしい。

主人公は12歳の男の子で、ある日お姉ちゃんと従兄弟とロンドンアイに乗りに行くのですが、チケット売り場は長蛇の列。

そこへ見知らぬ人がやってきて、チケットが要らなくなったからと1枚だけチケットをくれる。それで、ロンドンアイに乗ったことのない従兄弟が1人で乗ることに…。

2人は従兄弟が降りてくるのを待っていたけど、乗っているはずのケーブルが降りてきても、彼の姿はなかった…。

どこに消えたのか…!?

子供たちがその謎に挑む。

子供であるということは探偵業にとって大きな障害だ。エルキュール・ポアロほど行動の自由がない。何処へ行くにも親の許可が必要だし、捜査していること自体「遊びじゃない。不謹慎だ。」と怒られるから内緒にしないといけないし。ご飯もあれば宿題もある。

主人公の少年がとても個性的です。特定されてはいないけど、多分アスペルガー症候群なのだろう。知識が豊富で、将来は気象予報士になりたいと思っている。お姉さんは生意気なティーンエイジャーで、弟を時には邪魔にしながらも助け合っていくところがよかった。

そういう訳で、主人公があらゆる俗世間の事象を気象状況に例えるため、この本には様々な難しい気象用語が続出しておもしろい。

例えば

meteorologist…気象学者

anticyclone,cyclone…高気圧、低気圧

cumulonimbus cloud…積乱雲

thunder clap…雷鳴

Coriolis effect…コリオリ効果

など。

勉強になる。

皆さん、コリオリ効果って知ってますか?

私はこの本のおかげで初めて知ったのですが、南半球と北半球では逆なんです。シンクの水が排水口に流れて行く時の回転の向きが…!北半球では時計回り、南半球では反時計回りなんですって!?そして、赤道上ではまっすぐ流れ落ちて行くんです。

すごい。知らなかった。「ほんとか〜?」と思ったら、YouTubeなどで映像を見てみてくださいね。

この言葉を知ってから、2.3日いろんな人にその話をして当惑を誘ってしまいましたが、もしいつか南半球か赤道に行くことがあったら、実験してみたいな~と思います。かなりの確率で忘れちゃいそうだけど。

台風も北半球では時計回り、南半球では反時計回りになるのです。当たり前のことが当たり前でないと知る。

観覧車が何処から見るかによって回る向きが違って見えるように、物事は見方によって全然違う様相をなす。そんな発想の転換がこの事件を解く鍵となっています。

まだまだ世の中には知らないことがたくさんある。それが伸び代ってことなのか!?