Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Emil and Detectives" Erich Kästner

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*一本漬けかピクルスか*

子供の頃からケストナーのファンで何度読んだかわからない。お母さん思いのエーミールにいつ読んでも胸がきゅんとなる。そして山高帽の悪党をとっちめる個性豊かな子供たち。もちろん最後は文句なしのハッピーエンドだ。

図書館に行って他に読む本を借りていたにも関わらず、この本を見つけてむんずと掴んだ。家に帰り早速読み始める。

原作はドイツ語だから、英語で読むと翻訳ということになる。普段は元々英語で書かれたものしか英語で読まない。だって、どうせ翻訳なら日本語で読んでも英語で読んでも一緒じゃない?それなら日本語の方が断然読みやすいかなと思って。

オンライン英会話の先生にそういう話をすると、そんなことはない、英語とドイツ語は非常に近い言語だから親戚みたいなもんで従って英語の訳の方が原書に忠実に訳しやすいのでは云々と言われる。まぁ、一理あるね。

でも、翻訳というのはどの道誰かの脳みそを経由してやってくる文章だ。直行便ではない。原作とは似て非なるものでありうる。

なんだかそれって料理のようなものかなと思った。

きゅうりが食べたい。生で齧ることもできるし、料理人が日本人だときゅうりの一本漬けになるし、アメリカ人だったらピクルスにしてハンバーガーに添える?そういう感じに似ている。

ちなみに、この本は、2019年アメリカ版で、「現代のアメリカの子供達に親しみやすいように現代的アメリカ英語に訳した」と翻訳家も後書きで述べている。

なるほど、不思議にアメリカンなエーミールです。

私が子供の頃から読んでいるのは、小松太郎さん訳の翻訳っぽい美し日本語版。だから、このふたつの翻訳小説はなんか全然雰囲気が違っててそれも興味深かった。「おーい、エーミール君、お母さんにそんな口の利き方していいのかい?」と思ったけど、確かに今どきの子供は親に敬語なんか使わないだろうなとも思う。私は個人的には不自然翻訳日本語がかなり好きなんですけど。村上春樹さんもそうなのではないかと思っています…。

ひとつ残念だったのはこの本では私の大好きな作者のまえがきが完全に削除されていたことです。ケストナーの前書きは確かに少々くどめではあるけど、かわいらしいのに…。その代わりにゼンダックの文章がまえがきとされていました。まぁ、それもよかったです。

味はお好み次第。いろんな味で料理を楽しみたいです。