Bookeater's Journal

洋書の読書感想文

"Skipping Christmas" John Grisham

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マリアさんの気持ち*

寒いのは苦手だ。

人間は何故冬眠しないのか。

熊は冬眠している時は何も食べないのか。

トイレにも行かないのか。

と、いろいろ考えるが、冬眠はできそうにないので、できるだけ冬を楽しく過ごしたい、と思い、冬らしい本を読んでみる。

インターネットで「クリスマス おすすめ 洋書」とかで検索。ディケンズの「クリスマス キャロル」もカポーティの「クリスマスの思い出」も去年読んでしまった。毎年同じ本を読むというのもありかもしれない…。

ジョン・グリシャムの本は一度読んでみたいと思っていたので、この本を選んだ。幸運にも図書館にあるらしい。もちろんと言うべきか書庫納で…皆さん、図書館の倉庫はお宝でいっぱいですぞ(長老の口調で)。

端的に言うと、現代アメリカ版(2001年初版)クリスマスキャロルといったストーリーです。

ある冬に、会計士の男が、去年のクリスマスに6,100ドル使っていたことに気づく。2023年12月現在日本円に換算すると893,216円だそうです…。結構な金額ですね。円安だし。

それで、クリスマスなんてお金の無駄遣いだと思い、今年1年だけクリスマスを休んで南の島へクルーズ旅行に行こうと思いつく。妻も巻き込んで、事態は思わぬ方向へと進んでいくのだ…。

アメリカのクリスマス(と言ってもいろいろなんだろうけど)って大変なんだねー。物語の舞台はアトランタ空港から車で20分の場所にあるらしいんだけど。お付き合いとかチャリティーとか。

主人公は半ば意固地になってアンチクリスマスを貫こうとする。笑えるけど、あまりにも皮肉な笑いで、正直なところ読んでいていやになってページがなかなか進まなかった。

それが最後の最後になって、怒涛のハッピーエンドへと向かうのだが、これまで溜まりに溜まっていたフラストレーションが一気に開放される。流石ベストセラー作家、上手いなーと思いました。

でも、個人的にはなんかしっくりこない。あまりの主人公の変貌ぶりに、素直に共感して「よかったねー」ということができなかった。

結局お金か…それがアメリカか…と思わんでもない。

最近クリスマスが近づいてきて、ひとつ気になっていることがある。人に言っても「はぁ?」という反応だ。

キリスト教を信じていらっしゃる方はここから先は読まないでください。たぶん気を悪くすると思います。

というのは、「マリアさんはそれでOK?」ということだ。いきなりなんの意思確認もなく受胎告知、そして処女懐胎ってどういうこと?それでいいの?馬小屋で産んだら大変じゃん!?とか思う訳です。

だって母親になるって大変なことだ。

世界がひっくり返るんだから。

先日、朝日新聞に作家の金原ひとみさんが母親になることとアイデンティティみたいなテーマで寄稿している文章を読んだが、激しく同意した。

母親になると一時的あるいは永久的に自分を見失ったりもする。

だからマリアさんは聖人ってことなの!?

世の中にはもっと悩むべきことあるだろ!?っておっしゃる通りです。

読んだ本に共感できないこともあれば、誰にも共感されないこともある。

それでも自分らしさを失うことなくがんばっていきたいと思う年の瀬です。